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  • 2021.08.17
  • コラム

保育士の配置基準とは?国と自治体の違いや計算方法を紹介!

保育士の配置基準
保育士の配置基準は、保育施設を運営する上で満たさなければならない基準のひとつです。

保育園は子どもの年齢と人数に応じて、定められた人数の保育士を配置しなければなりません。ただ、近年保育士不足から、配置基準を満たすことが難しい状態にあり、その保育体制が保護者などからも問題視されてきました。

そして、このままでは待機児童解消につながらないと配置基準が見直されています。

この記事では、国と自治体が定める保育士の配置基準を説明するとともに、緩和された配置基準の内容や計算方法について解説します。

保育士の配置基準とは?

保育士の配置基準とは、子どもの安全と保育の質を担保するために、保育士1人が何歳の子どもを何人まで保育できるか定めた人員配置の基準のことです。

厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)」に最低基準が定められていますが、各自治体により内容は異なります。ここではそれぞれの配置基準を解説します。

国が定める保育士の配置基準

国が定める認可保育園に対する基準について解説します。この基準が、保育士の配置基準のベースとなります。

年齢 人数
0歳児 子ども3人に対し保育士1人
1~2歳児 子ども6人に対し保育士1人
3歳児 子ども20人に対し保育士1人
4歳児以上 子ども30人に対し保育士1人

参考URL:厚生労働省「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第(三十三条)」

乳幼児ほど人の手が必要になる場面が多いため、保育士1人が保育できる人数は少なくなります。

保育園を運営するにあたり、国の定める基準を下回らないこと、常時2名以上の保育士を配置することが原則となっており、基準を満たさなければ保育園の運営は認められません。

認可保育園は年1回の立入調査、認可外保育園は原則として年1回以上の立入調査が義務付けられており、このとき配置基準に違反が見つかれば、文書による改善指導が行われます。

1カ月以内に運営が改善されないと、事業停止命令または施設閉鎖命令の対象となってしまいます。

自治体が独自に定める保育士の配置基準

「保育施設の質の向上」や「保育士、従業員の負担軽減」を目的に、自治体や保育施設が独自に基準を設けている場合もあります。

保育事業に力を入れている自治体は国の基準を下回らず、厳しい基準を設けて保育の質を担保しています。

以下は、独自の配置基準を定めている自治体の例です。

自治体 配置基準の概要 リンク
横浜市 1歳以上の各年齢において基準を上乗せしており、1歳児4人に対し保育士1人、2歳児5人に対し1人、3歳児15人に対し1人、4歳以上児は24人に対し1人としている。 横浜市「令和2年 11 月版 こども青少年局保育・教育運営課」
京都市 1歳以上の各年齢において基準を上乗せしており、1歳児5人に対し保育士1人、3歳児15人に対し1人、4歳児20人に対して1人、5歳児に関しても25人に対して1人としている。 京都市情報館「京都市は手厚い保育士配置でゆとりを持った丁寧な保育を可能に」
豊島区 1歳児は5人に対して保育士1人としている。定員20人以上60人以下および91人以上の保育施設は、保育士1人を増員するとともに、61人以上90人以下の施設は非常勤保育士を1人増員しなければならない。 豊島区「地域型保育事業 指導検査基準 (令和2年度用)」

保育園の形態ごとの配置基準

保育士の仕事

保育士の配置基準は、保育施設の形態(認可・認可外など)、施設の種類によっても異なります。

ここでは認可外保育施設、幼保連携型認定こども園、地域型保育事業の配置基準について解説します。

認可外保育施設

認可外保育施設とは、認可保育所等以外の保育施設のことです。児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育施設全般を指します。

配置基準は先に紹介した国の基準をベースとしていますが、一部緩和されている箇所があります。

1日に保育する乳幼児の数が6人以上の施設

  • 保育時間が11時間以内の場合は認可保育施設と同一の配置基準。
  • 保育時間が11時間以上の場合は、保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上の配置が必要。

認可保育園は保育士すべてが有資格者でなければならないのに対し、認可外保育施設は保育者の3分の1以上が保育士又は看護師資格を持っていればよいと定められています。企業主導型保育園(認可外)では、看護師は1名のみ保育士としてカウントするとなっていますので、2名以上は無資格となってしまうケースがありますので注意してください。

ただ、すべての保育従事者が保育士又は看護師の資格を有していることが望ましいとされており、保育士または看護師の資格を有しない従業員については、家庭的保育者(市町村が行う一定の研修を終了している者)を推奨すると記されています。

1日に保育する乳幼児の数が5人以下の施設

保育に従事する者1人に対して乳幼児3人以下とし、家庭的保育補助者(市町村長が行う研修を修了した者)とともに保育する場合には、乳幼児は5人以下でならないと定められています。

居宅訪問型保育(ベビーシッターなど)に関しては、原則として保育に従事する者1人に対し、乳幼児1人とされています。

参考URL:厚生労働省「認可外保育施設に対する指導監督の実施について(平成13年3月29日)令和3年4月30日最終改正」

認可外保育施設の詳しい設置基準について知りたい方は下記を参考にしてください。

▶「認可外保育施設の設備・運営の基準とは?補助金についても解説」

幼保連携型認定こども園

幼保連携型認定こども園とは、小学校就学前の子どもを対象に、教育と保育を一体的に行う施設のことです。幼稚園と保育園の両方の良さを併せ持っています。

保育士の配置基準は以下の通りです。

年齢 人数
0歳児 子ども3人に対し保育士1人
1~2歳児 子ども6人に対し保育士1人
3歳児 子ども20人に対し保育士1人
4~5歳児 子ども30人に対し保育士1人

参考URL:内閣府「認定こども園概要」
平成26年に施行された子ども・子育て支援新制度に詳細が定められており、満3歳以上の教育時間は学級を編成し、保育教諭を配置します。

保育教諭は、幼稚園教諭の免許状と保育士資格を取得している必要があります。こちらは施行された平成26年より10年間(令和6年まで)は一定の経過措置があります。

参考URL:文部科学省「幼保連携型認定こども園の認可基準について」

地域型保育事業

地域型保育事業とは、保育ニーズの高い0~2歳児への対応を目的として設けられた施設のことで、すべて認可保育施設に該当します。

小規模保育事業、事業内保育事業、家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業の4つに分類され、それぞれ保育士の配置基準は異なります。

小規模保育

受け入れる子どもの年齢は0~2歳、定員は6~19名です。保育士の配置比率等により、ABC型に分類されます。

類型 職員配置基準 職員資格
A型 保育所の配置基準+1名 保育士(保健師、看護師又は准看護師の特例が設けられている)
B型 保育所の配置基準+1名 1/2以上が保育士。保育士以外には研修を実施する必要がある。
C型 子ども3人に対し1人(補助者を置く場合は子ども5人に対し2人) 家庭的保育者

事業内保育事業

受け入れる子どもの年齢は0~3歳未満で、企業や病院などの事業所で働く従業員や地域の子どもを受け入れます。定員数により、保育士の配置基準が異なります。

  • 19人以下:小規模保育A型B型の基準と同じ
  • 20人以上:国が定めた配置基準と同じ

家庭的保育事業

自宅などで少人数の子どもを預かり保育を行います。

受け入れる子どもの年齢は0~2歳、子ども3人に対し職員配置基準は家庭的保育者1人です。ただ、補助者を置く場合は子ども5人に対し2人されています。※小規模保育C型の基準と同じ

居宅訪問型事業

家庭的保育者(ベビーシッター)や保育士が保育を必要とする子どもの自宅を訪問して保育を行います。

0~2歳児を対象にしており、子ども1人に対し保育士または家庭的保育者1人を配置します。

保育士の配置基準の計算方法

保育士の計算

保育士の配置基準を適宜見直すことで、保育の質を向上できます。そのためにも計算方法を知っておきましょう。

年齢別の定員数を配置基準で割る

保育園の定員数を次のように仮定します。

例)0歳…5人/1歳…10人/2歳…15人/3歳…20人/4歳…25人/5歳…30人

各年齢の定員数を配置基準で割り、割ったあとの小数点以下は繰り上げて計算します。小数点第2位以降は切り捨ててください。

年齢 計算式 必要保育士数(小数点四捨五入)
0歳 5人÷3=1.6 2人
1歳 10人÷6=1.6 2人
2歳 15人÷6=2.5 3人
3歳 20人÷20=1 1人
4歳 25人÷30=0.8 1人
5歳 30人÷30=1 1人
合計 10人

各年齢ごとに求められた保育士の人数を合計すると、この保育園では最低10人の保育士が必要とわかります。

延長保育などで必要になる保育士数を加算する

上記で算出された人数は、通常保育をする上での最低人数です。

朝夕に延長保育を実施しているなら、早番、遅番シフト調整しつつ、適宜人員を追加するなどして、配置数が常に2人以上になるよう調整します。

保育士の配置基準における規制緩和の流れ

待機児童を解消し、受け皿拡大が一段落するまでの緊急的・時限的な対応として、平成28年4月から緊急的な対応として基準が一部緩和されました。

朝夕の延長保育で必要になる保育士を、家庭的保育者や幼稚園教諭、小学校教諭などの資格者でも対応できるようになっています。

特例 内容
1 朝夕など児童が少数となる時間帯における保育士配置に係る特例 保育士最低2人配置要件について、朝夕など児童が少数となる時間帯においては、保育士2名のうち2名は子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。
2 幼稚園教諭及び小学校教諭等の活用に係る特例 保育士と近接する職種である幼稚園教諭、小学校教諭、養護教諭を、保育士に代えて活用可能とする。ただし、全体で1/3を超えない(保育士を2/3以上配置する)ことが必要。
3 保育所等における保育の実施に当たり必要となる保育士配置に係る特例 保育所等を8時間を超えて開所していることなどにより、認可の際に最低基準上必要となる保育士数(例えば15名)を上回って必要となる保育士数(例えば15名に追加する3名)について、子育て支援員研修を修了した者等に代替可能とする。ただし、全体で1/3を超えない(保育士を2/3以上配置する)ことが必要。

出典:厚生労働省「保育所における保育士配置の特例(平成28年4月施行)の実施状況調査について(平成28年10月1日)」

まとめ

保育士の配置基準が一時的に緩和方向にあるとはいえ、自社で資格所持者など従業員を確保するのは大変です。

国の基準は流動的であり、万一立ち入り調査の際に問題が発覚すれば、業務停止の可能性もあります。自主運営により人材を確保できず、経営が困難な状況にある保育施設も少なくなりません。

保育士を直雇用している委託会社に運営を任せることで、人件費を上手くコントロールできるようになります。この方法で経営改善に成功している保育施設は増えています。

スクルドアンドカンパニーは、40園以上の保育施設運営実績があります。保育士の配置基準に関しても精通していますし、運営を委託することで保育士の定着や保育サービスの向上、運営に関する問題をクリアにできるはずです。

設置基準や面倒な申請手続きに関するご相談にもお答えします。お気軽にお問い合わせください。

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