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- 2021.08.18
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保育園を設立するのに必要な費用とは?コストを抑える方法も紹介
保育事業への参入を考えている経営者にとって、保育園設立に伴う費用は最も気になるポイントではないでしょうか。
施設の広さや設置場所、工事内容などの条件により費用は上下しますが、具体的なイメージを持つためにもある程度幅を持たせて捉えておくのがよいでしょう。
この記事では、保育園を設立するのに必要となる費用を紹介するとともに、開設準備を委託業者に依頼してコストを抑える方法について解説します。
保育園の設立に必要な費用とは?
保育園設立に伴う費用は、規模の大小、工事内容(新設or増設)、設置場所(事業所内orテナント手配)などにより大きく異なります。
工事費のみに着目すると、事業所の入っているビルの1階を改装するだけなら300~1,000万円、新たに保育園を建設するなら5,000万円以上かかります。
とはいえ、特殊な機械設備や機器を用意する必要がないこともあり、保育園は他の事業と比較すると初期投資は安く済む傾向にあります。
保育園設立は自己資金300万円程度から可能であり、不足分は日本政策金融公庫や信用保証協会付融資の創業融資制度が利用できます。参考までに、内閣府が公表している保育園設立費用の例は以下の通りです。
内閣府が公表している保育園設立に伴う費用参考例
企業名 | 設立場所 | 設置場所 | 園児定員数 | 設立費用 | 費用補足 |
---|---|---|---|---|---|
株式会社東急百貨店(小売) | 北海道札幌市 | 事業所内設置(店舗5階) | 19人 | 10,000万円 | 設計費、開設準備費を含む |
杉並交通株式会社(運輸) | 東京都杉並区 | 本社建物内(2階) | 10人 | 2,600万円 | 開園準備費、外階段整備費を含む |
学校法人井之頭学園(教育・学習支援) | 東京都武蔵野市 | 学校敷地内、合宿所改修 | 8人 | 約4,775万円 | 建物支出、製氷機や食洗機などの備品支出、人件費等を含む |
株式会社ジェイアールシステム・エンジニアリング(情報処理サービス) | 東京都国分寺市 | 事業所内設置(1階) | 12人 | 約4,500万円 | – |
社会福祉法人慶成会(福祉) | 静岡県浜松市 | 介護施設の1階ピロティ部分を改築 | 60人 | 約1億3,300万円 | – |
株式会社ビティー(建設) | 大阪府八尾市 | 近隣ビル(1階) | 50人 | 約5,886万円 | – |
株式会社ニチイ学館(福祉・保育) | 和歌山県和歌山市 | 近隣ビル(2階) | 18人 | 約2,800万円 | – |
株式会社CREATIVE LAB(美容) | 広島県広島市 | ビルの元飲食店テナント(1階) | 88人 | 約1億300万円 | 施設設備費、その他費用(おもちゃ、お昼寝マット、机、いす等)を含む |
新日鐵住金株式会社(製造) | 福岡県北九州市 | 社宅敷地内に1階建ての建物を新築 | 30人 | 約6,700万円 | 建造物の建築費のほか、フェンス、備品等の費用を含む |
医療法人社団水光会(医療) | 福岡県福津市 | 事業所内設置(元事務室) | 50人 | 約1,450万円 | 改装費、追加工事代金、備品購入費用、その他を含む |
こういった費用がかかりますが、もちろん企業が所有する施設や土地を活用すれば、大幅にコストを抑えられます。
建物や土地がなくても店舗運営などの実績があれば、投資回収期間を意識したテナント手配や設計・施工、備品調達などが実現できるでしょう。
ただ、保育園を設立するのに適した物件を探したり、国や自治体の基準を満たした設計・施工を実施するには専門の知識が必要です。
保育園では、児童一人当たりの面積や建物の構造には基準が定められており、適切な物件を選定しなければなりません。保育事業に初めて参入するなら、委託業者に設立をサポートすることで、開設までスムーズに進められます。
スクルドアンドカンパニーには、直営店にて開所初月で定員充足、完全黒字スタートの実績があります。不動産開発力に強みを持ち、現場環境調査を重ねたマーケティングデータを保有しているため、最適なプランを提案できます。お気軽にご相談ください。
事業所(企業内)に保育園を設立するときの初期費用目安

ここでは、広さ20~30坪、園児20~30名を仮定した保育園の設立費用を紹介します(※金額はあくまで目安であり参考値です)。
項目 | 費用目安 |
---|---|
物件取得費 | 100~150万円 |
内装工事費 | 300~500万円 |
設備費 | 100~150万円 |
備品・消耗品費 | 60~100万円 |
広告宣伝費 | 20~50万円 |
以降は、各項目の内訳について解説します。
物件取得費
物件取得費とは、物件を契約する際に必要となる費用を総称したもので、具体的には保証金、礼金、仲介手数料などが含まれます。
保育園はどこでも設立できるわけではなく、定められた設置基準や指導監督基準に適合した事業用物件を選定しなければなりません。
費用は地域、立地、物件により異なり、交通の便や治安のよさ、公園の有無など保育園の運営方針も意識しながら調査する必要があります。
優良物件のほとんどは非公開のため、基準に適した物件に到達するには、経済条件や交渉力が必要です。
内装工事費
内装工事費とは、天井・壁などのクロス張り、タイルカーペット貼りなどの床工事、間仕切り壁の設置などにかかる費用のことです。ここでは、設計デザインとサイン(看板)を含んでいます。
保育園の内装は、設置基準や指導監督基準に適合させる必要があり、地震や火災から子どもを守る建築基準法や消防法などの観点が求められます。そのため、保育施設に精通した設計事務所や施工会社を選定する必要があります。
保育園の設置基準について詳しく知りたい方は、「認可外保育施設の設備・運営の基準とは?補助金についても解説」を参考にしてください。
設備費
設備費とは、保育園を運営するのに必要となる機器の導入にかかる費用のことです。
エアコンや空気清浄器などの換気設備、幼児用トイレや洗面所、医務室や調理室を設置する場合はそれらに必要な設備を整える必要があります。
備品・消耗品費
備品・消耗品とは、園児や従業員が使用する託児用品やお散歩用カート、洗濯機や冷蔵庫などの家電、掃除器具や消毒用品などのことです。
このほか、事務室用の机やイス、ロッカー、事務作業に使用するパソコンやプリンターなども含まれます。保育園の規模や園児の人数により内容や数が異なるため、事前にしっかりリサーチする必要があります。
保育園設立に必要な備品について詳しく知りたい方は、「保育園の開設に必要な備品とは?備品選びのポイント、注意点を紹介」を参考にしてください。
広告宣伝費
広告宣伝費とは、ホームページ制作、パンフレット、ポスター、タウン誌の掲載にかかる費用のことです。
事業所(企業内)保育所は認可保育施設とは異なり、自社で園児を集客しなければなりません。多額の広告宣伝費を投入しても、園児が確実に集まるという保障はないため、予算のコントロールと保育園に特化した広告戦略が必要です。
特にホームページは、園を身近に感じてもらえたり、保護者や求職者の窓口としても使えるため、早い段階から積極的に活用します。
ここまで保育園を設立する費用について解説しました。園児の安全や従業員の働きやすさを叶えるためにも、保育園の設備や質には妥協できません。ただ、必要のないところにまで投資してしまっては、いつまで経っても初期投資は回収できないでしょう。
保育園設立後の運用にかかる費用目安

保育園の運用にかかる費用を大まかに解説します。
最初に売上について把握しておきましょう。事業所(企業内)に設置する保育園の売上は以下のように計算します。
項目 | 計算式 |
---|---|
月極保育 | 月極料金×利用者数 |
一時保育 | 時間単価×預かり時間×利用者数 |
延長保育 | 時間単価×預かり時間×利用者数 |
年会費、教材費、オプションなど | 月額料金(または年額)×利用者数 |
売上に対し、1カ月の運営資金は、以下のような割合で考えます(※金額はあくまで目安であり参考値です)。
項目 | 売上高に対する比率 |
---|---|
人件費 | 60~70% |
テナント料 | 5~15% |
水道光熱費 | 2% |
給食費 | 3~4% |
委託運営費 | 2~3% |
保育園運営は、大きな割合を占める人件費がポイントになります。自主運営で経営難に陥っている保育園は、園児の集客だけでなく人件費のコントロールがうまくいっていないケースがほとんどです。
保育士の採用コストは正社員で平均83.9万円、パート・アルバイトで1人あたり15万円前後であり、従業員が定着しなければ広告宣伝費や教育研修費は増えていきます。これらの問題を解決する方法の1つに運営委託があります。
保育士を自主雇用している運営会社に委託することで、人件費をきちんとコントロールできるようになり、結果的に人的コストの削減につながります。
運営委託先の選び方について知りたい方は、「保育園の運営会社はどこがいい?選び方のポイントと注意点を紹介」を参考にしてください。
まとめ
保育園の設立にかかる費用は、飲食事業などと比較すると低いといえます。ただ、安定した経営基盤を確保するには、一定以上のクオリティが必要です。
事業所(企業内)保育所は、保護者の「認可でない」という不安を払拭するため、基準を十分に満たした内装、外装とともに既存保育園との徹底した差別化戦略が求められます。
スクルドアンドカンパニーは、専門講師による質の高い教育プログラムの導入や、保護者の負担を軽減するサービスなど、これまで培ってきたノウハウに基づくご提案が可能です。
設立から運営委託までフルサポートし、保育士の定着や保育サービスの向上、運営に関する問題をクリアにします。最適なプランを提案しますので、お気軽にご相談ください。