コラム
- 2021.09.16
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保育所の運営費とは?費用相場と適正化ポイントを紹介
保育園の運営費は、保育園の種類や規模により上下します。保育園の設立を検討しているなら、設立前に運営費を把握しておいたほうがよいです。
運営費を適正化できれば、業務効率化はもちろん、長期的に安定した保育園経営を計画できます。
この記事では、保育園経営に必要な運営費の内訳を説明するとともに、適正化のポイントについても解説します。
保育園の運営費とは
保育園の運営費とは「保育園を運営していくために必要になる費用」のことです。保育園によっては管理費とも呼ばれます。
ちなみに国の保育園の運営費用(公費ベース)は、平成29年度に15,020億円、運営体の利益や認可外保育園の運営費を加算すると2兆円規模と推測されています。
参考URL:協同組合さいたま総合研究所「保育所のモデル利益計画」
保育園の運営費を構成する要素
運営費には、人件費や賃借料、広告宣伝費、消耗品費などが含まれます。
この経費構成は、開設場所や園児定員数により幅があり、首都圏を始めとする大都市圏では人件費や地代家賃が高く、地方では低くなる傾向にあります。
保育園の運営費はどれくらいかかる?
内閣府が公表している保育園の年間運営費は以下の通りです。企業内に設置された保育園の運営費が多いですが、これで大体のイメージができると思います。
企業名 | 園児定員数 | 年間運営費 |
---|---|---|
株式会社東急百貨店(小売) | 19人 | 約4,200万円 |
杉並交通株式会社(運輸) | 10人 | 約2,400万円 |
学校法人井之頭学園(教育・学習支援) | 8人 | 約5,600万円 |
株式会社ジェイアールシステム・エンジニアリング(情報処理サービス) | 12人 | 約3,600万円 |
社会福祉法人慶成会(福祉) | 60人 | 約3,600万円 |
株式会社ビティー(建設) | 50人 | 約1,129万円 |
株式会社ニチイ学館(福祉・保育) | 18人 | 約4,400万円 |
株式会社CREATIVE LAB(美容) | 88人 | 約7,000万円 |
新日鐵住金株式会社(製造) | 30人 | 約3,000万円 |
医療法人社団水光会(医療) | 50人 | 約6,000万円 |
保育園の運営費の内訳
保育園の運営費の7~8割は人件費、賃貸料が発生する場合は5~15%を占めます。
例えば、定員10名、保育士3~4名の小規模保育園の場合、人件費は年間約600~700万円、諸経費約130~150万円、水道光熱費を含めると概算800万円前後になります。
運営費の売上に対する比率は以下の通りです(あくまで参考値であり、保育園の運営状況によって上下します)。
項目 | 詳細 | 売上に対する比率 |
---|---|---|
人件費 | 保育士などの給与、福利厚生費 | 60~70% |
広告宣伝費 | 園児募集や、保育士募集などにかける費用。HP運用、チラシ印刷代や求人広告掲載費など。 | 1~3% |
賃借料 | 園舎と土地を借りている場合 | 5~15% |
消耗品費 | おもちゃや工作の材料、医薬品、保育業務支援システムなど。 | 1~3% |
水道光熱費 | 水道代やガス代、電気代や熱供給など。 | 2% |
委託運営費 | 業務の一部を、他の会社へ依頼した場合。 | 2~3% |
傷害保険、賠償保険料 | 保育所、保育士等に法律上の損害賠償責任が発生した場合の備え。 | 2~3% |
保育園の運営費は適正化すべき

保育園の運営費は適正化すべきです。費用対効果を考えたときに、その投入コストが見合っているか適正に判断すべきなのです。
ただ保育園の運営費は、単に切り詰めればよいというものではありません。アプローチしやすいコスト削減に終わらず、コストを適正化させる必要があります。
具体的には、経営方針に従って園児の安全や従業員の満足度、売上を上げるために必要なコストは積極的に投下し、成長性や収益確保にとって不要と判断できるコストは削除します。
経費として定めた金額を超えないように管理するのではなく、事業の成長や安定に必要なコストを、いかにメリハリを利かせて投入できるかがポイントです。
保育園の運営費を適正化する方法
保育園の運営費を適正化できれば、従業員の残業時間を削減し、本来の目的である保育・教育の質を向上できます。
それと同時に、職場環境改善による従業員の定着率アップも期待できるでしょう。具体的な方法は以下の通りです。
コストの見える化
一番初めに着手するのは「コストの見える化」です。何にどれだけコストがかかっているのか、という現状を把握するところからスタートします。
運営費を把握するには、現場業務の棚卸と分析が必要です。経費項目を細分化し、それぞれの項目を分析していくことで「消耗品の仕入れ値はいくらか」「屋外広告物などの広告宣伝費を見直せないか」「紙業務でヒューマンエラーが増えていないか」などの課題が見えてくるはずです。
直接費と間接費を分けて考える
経費には「直接費」と「間接費」があります。このように分けて考えるのが重要です。
直接費はサービスに直接影響のある人件費や賃借料、間接費はサービスに直接は関係しない付随的なコストである設備費や広告宣伝費、保育システム利用料(消耗品費)などが該当します。
直接費は削減効果がわかりやすく目に見えて効果を実感できますが、間接費は削減効果や投資による費用対効果はすぐに実感できないため、長期的な施策が必要です。
広告宣伝費(間接費)の適正化事例
具体的な目的(成果)を決めてから適正化に着手するとスムーズです。
- 目的:保育園の申し込み数を20%増やすために、効果がわかりにくい屋外広告を契約解除し、コストを最適化する。
- 施策1:ホームページのブログに記事を投稿することで集客を増やす。
- 施策2:ホームページとSNSと連携させて積極的に保育園の情報を発信する。
- 施策3:保護者用に利用者限定ページを作成し、保育中の様子を発信することで顧客満足度を向上させる。
過剰品質の見直し
過剰品質とは、サービスの品質水準が要求される水準と比べて高いことを指します。運営費の過剰品質を見直すということは、労力と成果のバランスを見直すということです。
子どもの安全や、従業員の業務に関係する項目は慎重に見直すべきですが、「コストが余計にかかっている」「従業員の長時間残業が発生している」というオペレーションがないかをチェックするのがよいでしょう。
利用者のニーズを反映しているか、利用者目線で運営しているか再確認したうえで、そのオペレーションやサービスが妥当であるかチェックします。運営費の適正化は、保育園経営のノウハウや実績がないとスムーズに進みません。
スクルドアンドカンパニーは40園以上の運営実績があります。サービスの品質を担保しながらコスト削減を実現できるため、自社運営と比較してトータルの費用を抑えられます。
すでに運営委託されている場合も、委託先を変えることで、あらゆる課題を解決できることがありますので、お気軽にご相談ください。
保育園運営費の適正化の考え方、ポイント

保育園の運営費適正化のポイントは、以下の3つです。
1.助成金や補助金を活用する
保育園の種類にもよりますが、園児1人につき毎月助成金や補助金が支給される場合があります。
単価は自治体、施設の定員数、職員の平均勤続年数、受け入れている園児の年齢によって異なり、園児が低年齢ほど高単価です。
一般的に助成金、補助金が支給されるのは認可保育園ですが、認可保育園への移行を希望する認可外保育施設に対して運営費を補助する制度や、コロナ禍のマスクや消毒液、従業員の感染対策が支給対象の補助金などがあります。
参考URL:内閣府「子ども・子育て支援新制度施行後5年の見直しに係る検討について」
参考URL:厚生労働省「保育対策総合支援事業費補助金」
園運営のステージや社会情勢により助成金や補助金が変わってくるので、定期的に関連制度をチェックしましょう。
保育園の補助金については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.定型的な事務作業をデジタル化する
保育園の業務をデジタル化することで、業務効率化と働き方改革を実施できます。例えば、保育業務支援システムを導入することで、従業員の書類業務を減らし、子どもと向き合う時間を増やせます。
保育向けICTシステムの機能例
機能例 | できること |
---|---|
園児台帳 | 園児の個人情報だけではなく、保護者宛の連絡事項や提出書類、請求情報などを一括管理できる。 |
登降園管理 | 保護者にICカードリーダーをタッチしてもらうことで、園児の登降園情報を一覧で確認できる。 |
保育記録 | 身体測定の数値を記録し、保護者とデータ共有できる。 |
事故・ヒヤリハット事案の蓄積 | 保育中に起きた事故やヒヤリハット事案を記録し、従業員間で回覧、共有できる。 |
午睡チェック | スマホから寝相やうつぶせ寝の修正を記録、監査書類としても活用できる。 |
保育料計算 | 請求書から領収書発行までミス、モレの無い経理業務を実現できる。 |
3.委託業者に運営を委託する
運営費の適正化は園運営の実績やノウハウがないと難しく、経営悪化などを理由に運営委託を選択する企業も少なくありません。
自主運営の場合、大きな割合を占める人件費のコントロールは特に難しく、保育士を確保できたとしても、優秀な人材を定着させるのは困難です。
委託会社に依頼すると委託料を支払うことになりますが、保育士の手配は不要になるため、全体的な負担は軽くなります。
委託業者の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
保育園の運営費適正化の事例
ここでは、運営費の適正化に成功した事例を紹介します。
委託先のアドバイスでサービス品質の向上を実現
自主運営から委託運営に変更した企業内保育園の事例があります。
委託運営に切り替えたことで、集客の強化と保育品質が向上し、保育園の夜勤稼働日数が4倍に増加しました。
売上アップにより、委託先のアドバイスで新たなカリキュラムを導入したり、設備の見直しを実施するなど運営費の最適化に成功しています。
助成金申請や従業員のシフト調整も任せられるため、業務効率も大幅にアップ。園の雰囲気も良くなり、離職率も改善されています。
保育業務支援システムで業務の効率化を実現
業務オペレーションに保育業務支援システムを導入した事例です。
従業員は園児の登降時、受け渡しや連絡事項で多忙なため、園児1人1人の登降時間を正確に把握するのは困難です。
システム導入により、保護者がICカードをかざすだけで時間を正確に記録。園内にいる園児の点呼もスムーズになり、安全面での貢献も期待できます。
事務作業では、登園人数に対する従業員の調整や、職員のシフト表作成などが大きな負担です。システムに園情報と配置基準を登録すれば、子どもの人数に対して何人必要なのかひと目で確認できます。
シフト表管理機能が搭載されていれば、無駄な人件費は発生せず、シフトを修正する際のミスも軽減できます。保育業務支援システムにより従業員は本来の業務に集中できるため、保護者対応もスムーズになります。
まとめ
利用者や従業員に選ばれ続ける保育園にするには、運営費の適正化が早道です。保育園に求められる機能や役割は年々多様化しているため、安定した経営基盤がないと新しいカリキュラムやサービスに着手できません。
経営の安定性・持続性を考えるなら、スクルドアンドカンパニーにご相談ください。ICTを活用した業務効率化や、質の高い保育を実現する従業員研修など、豊富なサービスをご提案いたします。