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- 2021.10.28
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保育園の監査とは?その種類と内容をわかりやすく解説
平成27年4月に施行された子ども・子育て支援新制度では、特定教育・保育施設に対し施設型給付費などの支給がされるようになると同時に、支給の適正化を図るための指導および確認監査が行われるようになりました。
保育園を運営している場合には、こういった監査は避けては通れないものです。基準を満たしていないと監査で指導を受けることになりますので、監査への対策を行いましょう。
この記事では、子ども・子育て支援新制度における指導監査の種類や基準などについて解説します。しっかりと把握して監査をクリアしましょう。
保育園の監査の種類
保育園に対する監査には、以下の2種類があります。
- 施設監査(認可制度等に基づく指導監査)
- 確認指導監査(確認制度に基づく指導監査)
施設監査(認可制度等に基づく指導監査)は従来から行われていた監査であり、職員の配置基準や面積基準など、認可・認定基準の遵守の観点から、施設・事業所の類型に基づき施設監査を行います。主に施設の設備や運営に関する基準が守られているか検査するのが目的で、基準を満たしていない場合、改善指導を行います。
確認指導監査(確認制度に基づく指導監査)は新制度に基づいた監査です。適正な特定教育・保育の提供など確認基準を遵守しているか、施設型給付費などの支給に関する業務は適正に実施されているかなどの観点から行われます。
確認指導監査は、子ども・子育て支援法に基づき、特定教育・保育施設としての運営の基準を遵守すること、施設型給付費の請求事務を適切に実施することなどを目的としています。
ここでは、それぞれの監査について詳細を紹介します。
施設監査
施設監査の詳細、内容について説明します。
施設監査の種類
施設監査には、一般監査と特別監査の2種類があります。
一般監査は、定期的かつ計画的に実施されます。特別監査は、事業運営および施設運営に不正または著しい不当があったことが疑われる理由があるときに行われます。特別監査が行われる主な理由は以下です。
- 基準に違反があると疑われる理由があるとき
- 度重なる一般監査によって是正の改善が見られないとき
- 正当な理由がなく一般監査を拒否したとき
施設監査の主な内容
施設監査は、都道府県および指定都市、中核市によって実施されます。施設監査は、教育・保育環境の整備、教育・保育内容、健康・安全・給食に関する事項について実施します。それぞれについて説明します。
教育・保育環境の整備に関する事項
教育・保育環境の整備に関する事項では、次の5項目について監査を実施します。
- 学級編成および教員配置の状況
- 認可定員の遵守状況
- 園舎に備えるべき設備や定期的な修繕改善等
- 教育、保育を行う期間、時間
- 教員の確保、定着促進および資質向上の取り組み
教員の配置や定員、設備や期間など、保育の環境に関する監査です。教員の保育士の設置基準については、次の記事で詳しく解説しています。
教育・保育内容に関する事項
教育・保育内容に関する事項では、次の4項目について監査を実施します。
- 教育および保育の内容に関する全体的な計画の作成
- 指導計画の作成
- 小学校教育との円滑な接続
- 子育て支援の内容および過程・地域社会との連携
保育園では年間の行事や日々の教育に関して指導計画(カリキュラム)を作成します。しっかりとした計画を作成しなくてはなりません。
カリキュラムの作成について次の記事で詳しく解説しています。
健康・安全・給食に関する事項
健康・安全・給食に関する事項について、次の3項目について監査を実施します。
- 健康の保育増進に関する取組状況
- 事故防止・安全対策に関する取組状況
- 給食の適切かつ衛生的な提供に関する取組状況
園児の健康への取り組みがなされているか、事故や給食などへの対策が取られているかなどを監査でチェックします。
監査に基づく措置
監査終了後、園長に対して速やかに調査結果を説明し、文書にて必要な指導や助言などを行います。
指導や助言などを行った事項については、決められた期限内に対応状況の報告が求められます。報告によって、是正改善の有無を確認します。適正な是正改善が実施されない場合、必要に応じて改善勧告などの措置が講じられます。
指導を受けた保育園は、厚生省のWebサイトに掲載されることになるので、監査対策を行うようにしましょう。
確認指導監査
確認指導監査は、新制度に伴い行われるようになった監査です。
「子ども・子育て支援法」の規定に基づき、特定教育・保育施設(認定こども園、幼稚園、保育所)の運営者および、特定地域型保育業者(小規模保育、家庭的保育、事業所内保育、居宅訪問型保育)に対し、特定教育・保育などの質の確保と施設型給付費などの適正化を図るために指導を実施しています。
確認指導審査では業務管理体制検査を実施しますし、法令遵守などの管理業務体制の整備に関する検査(業務管理体制の検査)も実施します。
確認指導監査の種類
確認指導監査には、集団指導と実地指導があります。
集団指導
集団指導や、新規施設ではおおむね1年以内、既存施設では必要と考えられる内容が生じたときに実施されます。
各種基準の遵守に関して周知徹底を図る必要があると認められる場合、必要に応じて事業者を一定の場所に集め、講習などによって行ないます。
実地指導
市区町村が実地による指導が必要だと認める施設を対象に随時実施されます。保育施設や事業所の実地において質問を行いながら、主に確認基準の遵守に関して検査を行います。
多くの自治体から、実地指導を実施日する日の1ヶ月前までに実施通知を送付されます。通知と一緒に送付される事前提出資料を作成し必要書類を添付して、実地指導実施日の2週間前までに提出する必要があります。
実地指導の結果、指摘を受けた場合には文書による改善報告が必要です。指摘内容に応じて改善報告書を提出します。提出後、施設型給付費の返還指示を受けた際には、返還結果を報告する必要があります。
確認指導監査の主な内容
確認指導監査の主な監査内容は次の通りです。
- 利用定員に関する基準
- 運営に関する基準
- 給付に関する事項
利用定員に関する基準
保育園の利用定員を遵守できているかを監査します。保育園では、園児の数に対して必要な保育士の人数が決まっています。
そういった基準を満たしているかを見るのです。
運営に関する基準
運営に関する基準は、次の9点について監査します。
- 内容および手続きの説明および同意
- 応諾義務・選考
- 小学校との連携、教育・保育の提供、評価、質の向上
- 利用者負担の徴収
- 事故防止および事故発生時の対応、再発防止
- 利用定員の遵守
- 地域との連携
- 会計区分
- 各種記録(職員、設備および会計、教育・保育の提供計画等)の整備
小学校との連携や地域との連携、事故対応、会計や記録など、運営に関しての基準が満たせているかを確認するのです。
給付に関する事項
給付に関する事項は、次の4点について監査します。
- 地域区分、定員区分、認定区分、年齢区分
- 基本分単価
- 各種加算事項
- 各種加減・乗除調整事項
監査の流れ
監査の流れを解説します。施設監査も確認指導監査も根拠法令を元にしています。
施設監査の実施主体は、都道府県・指定都市・中核市ですが、確認指導監査の実施主体は市区町村です。監査によって実施主体が異なる場合があり、その際にはそれぞれの監査の実施主体同士が事前に調整を行い、必要に応じて同時に実施します。
1.実施通知
監査を行うことが決定したら、保育園の運営者に実施通知があります。
ただし、確認指導監査の実地指導中に次の項目に該当する状況を確認した場合には実地指導を中止し、直ちに確認監査へ変更します。そのような場合は実施通知はありません。
- 特定子ども・子育て支援施設等において著しい運営基準への違反が確認された場合
- 特定子ども・子育て支援施設等及び施設等利用給付認定保護者の施設等利用費の請求に、著しい不当が疑われる場合
- 意図的な隠ぺい等の悪質な不正が疑われる場合
- 上記のほか、特定子ども・子育て支援施設等が法第58条の9第1項各号及び第58条の10第1項各号に該当することが疑 われる場合
2.監査の実施
保育園に対して、関係書類の提示が命じられます。その上で質問を受け、関係場所に立ち入って施建物の検査を行います。
3.結果通知
監査の実施により改善の必要があってもなくても、後日、文書で通知があります。
勧告には至らないが改善を要すると認められる場合や、施設の利用費などの返還が必要な場合、第2号様式での通知があります。改善の必要がない場合は、第3号様式で通知があります。
4.改善報告書の提出
監査の実施により違反疑義等がある場合、3で指摘された事項について改善報告書を提出します。第2号様式により通知された指摘事項については、通知から60日以内に第4号様式により改善報告を提出します。
5.勧告
監査の結果、違反疑義が認められた場合には、保育園の運営者に対して期限を定めて文書で基準の遵守など、行うべきことの勧告があります。
勧告に従わなかったときは、その旨を公表されます。保育園の運営者は、期限内に文書によって改善報告書を提出します。
6.命令
正当な理由がないのに勧告に従わなかった場合、保育園の運営者に対して期限を定め、その勧告に従うよう命令があります。
保育園の運営者は、期限内に文書により改善報告書を提出します。
7.確認の取り消しなど
確認基準違反の内容が、子ども・子育て支援法第40条第1項各号及び第52条第1項各号のいずれかに該当する場合、保育園の確認を取消し、または期間を定めてその確認の全部もしくは一部の効力を停止します。
監査の対象となる施設
監査対象となる施設の種別によって、監査の実施主体は異なります。ここでは、施設の種別ごとに、実施主体、種類と実施頻度、主な監査内容を解説します。
特定教育・保育施設
特定教育・保育施設には、保育園(保育所)、認定こども園、幼稚園があります。
いずれも施設を運営するにあたり、利用者に代わり委託費を含む施設型給付費を受領している施設です。
- 保育園:保育園(保育所)の認可等の権限は指定都市・中核市を含む都道府県で、確認の権限は市町村にあります。
- 認定こども園:認定こども園には、幼保連携型・幼稚園型・保育所型・地方裁量型があります。
- 幼稚園:幼稚園の認可等の権限は都道府県、確認の権限は市町村にあります。
- 企業主導型保育所:企業主導型保育所の監査は、通常監査(立入調査)、特別監査(立入調査)、午睡時抜き打ち調査の3つあります。
保育園の監査の例
企業主導型保育事業の過去の事例ですが、令和元年度以降、のべ84運営者(のべ91施設)に特別立入調査を実施し、のべ37運営者(のべ44施設)に対し文書による指導が行われました(令和3年9月22日時点)。
監査で指導を受けた施設は、こちらのページのように一覧で名前を公表されます。
まとめ
新制度下では、認可保育所に対して従来から行われていた施設監査のほか、確認指導監査が行われるようになりました。監査の結果、是正の改善が見られないと、給付金が取り消しになる場合もあるので注意したほうがよいでしょう。
企業主導型に対しても監査は行われます。しっかりと対策を取りましょう。スクルドアンドカンパニーでは、これまでに多くの企業主導型保育園などの運営を行ってきました。
特別監査や抜き打ち調査にも対応可能です。法を遵守した設立や運営、カリキュラムの作成を行っており、監視への対応も可能です。お困りの方はぜひご相談ください。