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  • 2021.11.19
  • コラム

認可保育園がもらえる補助金とは?条件や金額の目安、申請方法を紹介

補助金の申請

認可保育園の設置を考えたとき、補助金を活用することで初期投資の負担を軽減することができます。

国や自治体が交付する補助金には、認可保育園の新設や改修に係る経費を補助する「保育所等整備交付金」や、賃貸物件の家賃を補助する「都市部における保育所への賃借料支援事業」などがあります。

補助金のことを知っておくと、受け取れる金額の目安がわかりますし、保育園の設置計画を立てやすくなります。この記事では、新たに認可保育園を設置する際に利用できる補助金について紹介します。

認可保育園の補助金とは?

認可保育園への補助金とは、保育事業者の取り組みをサポートするために、その資金の一部を給付するというものです。国や都道府県などの各自治体の予算の範囲内で実施されます。

補助金の対象は大まかに、認可保育園の工事にかかる「整備費」と、開業後の運営にかかる「運営費」の2つに分けられます。

注意点として、ここで紹介する補助金は現行制度に基づく案であり、今後変更される可能性があります。制度要綱の名称や内容、金額は実施主体である自治体によって異なりますし、保証されたものではありません。事業計画の段階で、必ず対象の自治体にお問い合わせください。

認可保育園の整備費の補助金

工事

整備費の補助金とは、認可保育園の施設整備に交付される補助金のことです。補助制度の対象となる工事を実施した事業者に交付されます。

ここでは、工事の種類別に3つの補助金を紹介します。

工事の内容 補助金の種類
建設・増設整備 1.保育所等整備交付金
賃貸改修 2.保育所等改修費等支援事業
3.都市部における保育所への賃借料支援事業

1.保育所等整備交付金

保育所等整備交付金とは、認可保育園を建設または増設するときに交付される補助金です。

新たに認可保育園を設置するすべての法人が対象であり、工事費または工事請負費、工事事務費が対象経費となります。土地の買収や整地、職員宿舎などに係る費用は対象外です。

計算式は以下です。

補助基準額=本体工事費+設計料加算+開設準備加算+土地借料加算

金額の目安として、「新子育て安心プラン実施計画」の採択を受けている自治体(待機児童10人以上、保育拡大量が90人以上の市町村)の一覧を紹介します。

採択市区町村の補助基準額

種目 本体工事費
(1施設当たり)
設計料加算
(1施設当たり)
開設準備加算
(整備定員1人あたり)
土地借料加算
(1施設当たり)
標準 都市部 ※1
整備定員 20名以下 7,270万円 8,000万円 本体工事費に係る交付基準額
(開設準備費加算、土地借料加算を除く)の5%
3万7千円 1,610万円
21~30名 7,620万円 8,390万円 2万9千円
31~40名 8,870万円 9,750万円 2万3千円
41~70名 1億90万円 1億1,120万円 2万円

※1:都市部とは1,000人/㎢以上の市町村。それ以外は標準。
参考URL:関東信越厚生局「保育所等整備交付金交付要綱(令和3年7月6日改正) 」

2.保育所等改修費等支援事業

保育所等改修費等支援事業は、認可保育園を設置する賃貸物件を改修するときに交付される補助制度です。

新たに認可保育園を設置するすべての法人が対象であり、既存建物を借り上げる「賃借料」と、保育に適した状態に整備する「改修費」が対象経費となります。

項目 詳細
賃借料 貸主に対して支払う礼金及び建物賃借料(工事の着工日または物件の賃貸借契約の契約日のいずれか遅い方の日から、事業の開始日の前日までのもの。敷金を除く)に係る費用。
改修費 設備整備及び改修整備等(工事請負費、工事施工のために直接必要な事務に要する費用であって設計監督料費等)に係る費用。

台東区の補助基準額

ここでは台東区の例で説明します。台東区では、賃借料と改修費の合計額を基準にして補助金が決まります。

定員 改修費等と賃借料の合計額 交付額
19名以下 2,300万円以下 実支出額の16分の15
2,300万円以上 対象経費の実支出額と補助基準額(※2)を比較していずれか少ない額の16分の15
20~59名以下 3,500万円以下 実支出額の16分の15
3,500万円以上 対象経費の実支出額と補助基準額を比較していずれか少ない額の16分の15
60名以上 6,300万円以下 実支出額の16分の15
6,300万円以上 対象経費の実支出額と補助基準額を比較していずれか少ない額の16分の15

※2:ここでの補助基準額とは下記の表により算出された金額を指す。

保育所の定員 1施設あたりの補助基準額
20名以下 1億1,790万円
21~30名 1億2,360万円
31~40名 1億4,370万円
41~70名 1億6,380万円

参考URL:台東区「台東区私立保育所開設整備費補助金交付要綱」

3.都市部における保育所への賃借料支援事業

都市部における保育所への賃借料支援事業とは、地価の高い都市部において、賃借料の一部を補助する制度です。

実際の建物賃料(敷金、礼金、共益費、管理費等は含まず)が、保育所委託費における賃借料加算(利用定員に応じた賃借料加算の単価に認可定員をかけた額)の3倍を超えるとき、建物賃料と賃借料加算額の差額の一部が補助されます。

参考URL:厚生労働省「保育関係予算の概要【令和2年度3次補正予算案・令和3年度予算案】」

大阪市の補助基準額

ここでは大阪市の例を説明します。大阪市は北区・中央区における保育ニーズの状況を踏まえて、令和2年から令和4年までの公募に限り、条件を上乗せして実施しています。

地域 補助額 補助上限額 補助期間
北区・中央区 建物賃料と賃借料加算額の差額の3/4 年間 1,650万円 開設から5年~最大15年
北区・中央区以外の区 年間1,125万円 開設から5年

参考URL:大阪市「認可保育所等の整備にかかる補助金(令和2年度)」

認可保育園の整備費補助金の申請の流れ

補助金の申請

ここでは、整備費補助金の流れを紹介します。自治体によって詳細は異なりますのでご注意ください。

翌年の4月に認可保育園を開園する場合、補助金の申請は、設置認可の申請とほぼ同時期の10月ごろに行います。11~12月末までに交付決定の連絡があり、翌5月以降に交付される流れが一般的です。

ただ、資金繰りなどで概算払いを選択した場合は、翌2~3月中に概算金額を受け取ることができます。

参考URL:流山市「認可保育所整備の手引き」

認可保育園の運営費の補助金

認可保育園は開業後の運営費にも補助金が交付されます。補助金額は保育している子どもの人数や年齢、保育士数などによって決定し、手がかかる低年齢児ほど1人当たりの額が高くなります。

計算式:給付費=公定価格(基本分単価+各種加算額)-利用者負担額

各区分の単価は、毎年国が発表しています。この計算式に利用される基本分単価、各種加算額について解説します。

参考URL:内閣府「令和3年度公定価格単価表 (施行日):令和3年4月1日 別表第2 保育所(保育認定)」

基本分単価

基本分単価とは、認可保育園のある地域の区分と利用定員の区分、入所する子どもの年齢と保育必要量の区分に応じて算出される子ども1人当たりの月額単価のことです。

下記表の「□」の中に、「公定価格単価表」に記載されている単価を当てはめることで、おおよその金額を算出できるのでご利用ください。

地域区分 定員区分 認定区分 年齢区分 教育標準時間
□/100地域 □□人~□□人 □号 □歳児 □円

各種加算額

各種加算額は、定員区分に応じた子ども一人当たりの単価で算出されます。加算項目と交付額は多岐にわたるため、一部の項目をピックアップして概要のみ紹介します。

加算項目 概要
処遇改善等加算Ⅰ 経験年数に応じた給与のベースアップや賃金改善加算
処遇改善等加算Ⅱ キャリアパスと研修体制を構築し、技能・経験を積んだ保育士に対する追加加算
冷暖房費加算 寒冷地などにおける暖房費などに対する加算
降灰除去費加算 降灰防除地域の降灰除去に対する加算
施設機能強化推進費加算 防災訓練や避難具の整備等の加算
栄養管理加算 子どもの栄養状態の改善、維持に努めた場合を評価する加算
第三者評価受審加算 第三者評価を受審する際の費用を補助する加算

内閣府はホームページ上で、「子ども・子育て支援新制度における公定価格の試算ソフト(令和3年度版)」を公開しています。利用定員や各種加算額の適否を入力することで、公定価格の年間総額を試算できます。

運営費補助金の申請

ここでは、運営費補助金の流れを紹介します。あくまで一例ですので、詳しくは認可保育園を設置する自治体にお問い合わせください。

初回は「保育所運営費補助金交付申請書」に「年度事業運営計画」や「収支予算書抄本」などの書類を添えて自治体に提出します。

以降は毎月の申請に基づき、交付額が決定します。交付は毎月払いから最大3ヵ月までの概算払いに対応している自治体もあります。年度末で途中入退園等による差額を精算するのが一般的です。

参考URL:加須市「幼児教育・保育の無償化のための請求書等(様式)について」

その他の補助金

整備費、運営費以外にも補助金はあります。ここでは、3つの補助金をピックアップして紹介します。

制度名 管轄 概要 交付額
保育所等におけるICT化推進等事業 厚生労働省 保育の周辺業務や補助業務に係るICT等を活用した業務システムの導入を支援するもの。 1施設あたり100万円
宿舎借上げ支援事業補助金 厚生労働省 雇用する保育士用の宿舎(賃貸マンション、アパート等)の借り上げる民間法人等に対し、その経費の一部を補助するもの。 上限は月額82000円
家庭支援推進保育事業 厚生労働省 外国人子育て家庭の占める割合が特に多い保育所に対し、加配保育士2名分の補助基準額を適用するもの。 1施設あたり386万7千円、20%以上外国人の場合は773万4千円。

参考URL:厚生労働省「令和3年度 保育関係予算概算要求の概要」

まとめ

国や自治体は、待機児童問題や女性の社会進出を後押しするため、認可保育園に関連する補助制度を拡充させています。保育事業への新規参入を考えているのなら、これらの補助制度を上手く活用するべきです。

とはいえ、認可保育園の設置基準は厳しく、補助金の申請方法も複雑です。物件選定や施設プランニングと平行して自治体と協議を進めるのは大変でしょう。

スクルドアンドカンパニーは、40園以上の運営実績があり、複雑でわかりにくい補助金申請もサポートすることができます。お気軽にご相談ください。

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