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- 2021.11.30
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保育所の設置基準とは?国や自治体が定めている緩和措置も紹介
保育所を開業するには、国や自治体が定めている設置基準を満たさなければなりません。
ただ、保育所の種類や子どもの人数、地域や自治体の状況によって設置基準は異なります。保育事業への参入を検討しているなら、形態別の設置基準を把握しておかなくてはなりません。
この記事では、認可保育所と認可外保育所の設置基準を説明するとともに、最新の緩和措置についても紹介します。
設置基準は保育所の種類によって違う

保育所は乳幼児が一日の大半を過ごす場所であるため、保育の質を確保する観点から、施設の設置基準が定められています。
設置基準の中身は保育所の種類によって異なり、それぞれの基準をクリアしないと保育所は開業できません。まずは保育所の種類の違いをチェックしましょう。
保育所は認可保育所と認可外保育所に分けられますが、それぞれの保育所を紹介します。
認可保育所の種類
認可保育所とは、都道府県知事に認可された施設のことです。設置基準は、「保育所の設置認可等について」や「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」などを元に、各自治体が制定しています。
園児の入園申し込みや、保育料の徴収は設置主体である自治体が行い、運営業務を行う事業者には児童数に応じた補助金が交付されます。
認可保育所の種類には、以下のようなものがあります。
認可保育施設の種類 | 定員 | 対象児童 | |
---|---|---|---|
認可保育所(公立・私立) | 20人以上 | 0歳~就学前 | |
地域型保育施設 | 小規模保育施設 | 6~19人以下 | 0歳~2歳 |
事業所内保育施設 | |||
居宅訪問型保育 | 保育士:子ども=1:1 | ||
家庭的保育施設 | 1人以上5人まで |
認可外保育所の種類
認可外保育所とは認可保育所以外の保育所のことで、「認可外保育施設に対する指導監査の実施について(旧:認可外保育施設指導監督基準)」を満たしている施設のことです。
認可保育所に比べ設置基準は緩やかであり、原則として1日に保育する子どもが1人以上の施設は、児童福祉法に基づく届出が必要です。
認可外保育所の種類には以下のようなものがあります。
認可外保育施設の種類 | 定員 | 対象児童 |
---|---|---|
企業主導型保育所 | 20名以上 | 0~2歳 |
認証保育所(東京都独自) | A型20~120人、B型6~29人 | A型0~5歳、B型0~2歳 |
ベビーシッター | 原則1:1 | ‐ |
院内保育所 | ‐ | ‐ |
ベビーホテル | ‐ | ‐ |
一時預かり | ‐ | ‐ |
認可保育所の設置基準
認可保育所の設置基準を紹介します。以下は国の基準を抜粋した内容ですので、必ず各自治体の要綱などをご確認ください。
私立の認可保育所
私立の認可保育所は、社会福祉法人や株式会社、NPOなどの民間法人が運営しています。原則として定員は20人以上です。
公立はすべて市区町村の負担で運営されるのに対し、私立は国、市区町村、都道府県がそれぞれ運営費を負担し、補助金として事業者に交付します。
職員の配置基準と資格

保育士と子どもの割合 | 職員の資格 |
---|---|
|
保育士 |
運営時は上表の配置基準を守るとともに、常時2名以上の保育士が必要です。
保育士の配置基準については、以下で詳しく紹介しています。
保育士配置に関する規制緩和
令和3年に施行される「新子育て安心プラン(令和2年12月21日公表)」では、不足している保育士の確保のために、保育士配置に関する規制緩和を提案しています。
具体的には、待機児童が存在する自治体において、各組・グループに常勤保育士1名以上を配置しなければならないところ、2名の短時間勤務(パート)保育士に代えることができる、といった内容です。
女性の就業率向上に伴い保育ニーズは増えており、保育の担い手の確保がますます困難になっています。慢性的な人材不足を解消するため、政府の積極的な取り組みが期待されます。
参考URL:厚生労働省「保育の現場・職業の魅力向上に関する報告書」
以下は、過去に規制緩和された内容です。
該当条件 | 緩和内容 |
---|---|
朝夕の子どもが少ない時間帯 | 最低2人の保育士が必要だが、うち1人は子育て支援員が対応できる |
配置基準を上回った職員がいるとき | 幼稚園教諭・小学校教諭・養護教諭など、子どもと関わる職種であれば、保育士の業務を代替できる。ただし、代替職員は研修を受けて保育の知識を習得することや、職員全体の2/3以上は保育士でなければならない。 |
乳児を4人以上保育する施設 | 職員のうち1人に限り、看護師・准看護師・保健師を、保育現場の一員として配置できる。 |
保育時間
保育時間は1日の最大11時間の「保育標準時間」と、8時間の「保育短時間」の2つがあります。
保育標準時間は、フルタイム就労を想定、保育短時間はパートタイムの就労を想定しています(早朝、夜間の延長保育サービスはこの限りではありません)。
参考:「子ども・子育て支援新制度について Ⅲ.各種基準等について」
設置予定地の不動産状況
認可保育所を開設する予定地は、事業者が用地や建物を所有しているか、貸与を受ける必要があります。
貸与を受けている土地や建物は、原則として登記しなければなりませんが、以下に該当する場合は登記を行わないことができます。
- 建物の賃貸借契約期間が賃貸借契約において10年以上である。
- 貸主が地方住宅公社等の信用力の高い主体である。
参考URL:厚生労働省「不動産の貸与を受けて保育所を設置する場合の要件緩和について」
施設設備の基準
年齢 | 部屋 | 面積 |
---|---|---|
0~2歳未満 | 乳児室またはほふく室、医務室、調理室、便所を設ける。 |
|
2歳以上 | 保育室または遊戯室、屋外遊戯場、調 理室、便所を設ける。 |
|
※1 原則として施設専用の屋外遊戯場(園庭)は必要とされていますが、必要な面積と安全が確保されていれば、最寄りの公園などを屋外遊戯場に代えることができます。
また、非常災害に対する措置として、消火用具や非常口を設置し、廊下やその他の通路を行き止まりにならないようにします。保育室等を2階に設ける場合は、以下を満たす必要があります。
- 耐火建築物もしくは準耐火建築物であること。
- 保育室が設けられている階に応じて、常用及び避難用階段をそれぞれ1以上設けること。
- 乳幼児が出入りや通行する場所に、転落事故を防止する設備を設けること。
小規模認可保育所
小規模認可保育所は定員6人~19人以下の施設であり、A型、B型、C型それぞれに認可基準が設けられています。
規模が小さいため、多様な物件を活用できますし、開業までの期間を短縮できます。
形態 | 定員 | 職員配置 | 職員資格 | 保育室等 |
---|---|---|---|---|
A型 | 6人以上19人以下 | 認可保育所の配置基準+1人 | 保育士(全員) | 0~1歳:1人当たり3.3㎡/2歳児:1人当たり1.98㎡ |
B型 | 1/2以上が保育士 | |||
C型 | 6人以上10人以下 | 3人に1人(補助者を置く場合は5人に2人) | 家庭的保育者 | 0~2歳児:1人当たり3.30㎡ |
事業所内保育所
事業所内保育所は、企業が従業員の子どもを保育するために設置する施設のことです。
従業員の子どもだけではなく、地域の子どもも地域枠として受け入れることが義務付けられています。設置場所は事業所の敷地内や近接地、通勤経路の途中にあるテナントなどです。
定員 | 職員配置 | 職員資格 | 保育室等 |
---|---|---|---|
20人以上 | 認可保育所の配置基準+1人 | 保育士 | 0~1歳:1人当たり3.3㎡/2歳児:1人当たり1.98㎡ |
19人以下 | 1/2以上が保育士 |
家庭的保育所
家庭的保育所は定員1~5人以下の施設であり、家庭的な雰囲気が特徴的な施設です。施設は施設は家庭的保育者の自宅など、さまざまなスペースを利用できます。
定員 | 職員配置 | 職員資格 | 保育室等 |
---|---|---|---|
3人以上5人以下 | 0~2歳児 3:1(家庭的保育補助者を置く場合 5:2) | 家庭的保育者(+家庭的保育補助者) | 0~2歳児:1人当たり3.3㎡ |
居宅訪問型保育所
居宅訪問型保育所は、保育を必要とする子どもの自宅に、保育者が出向いて保育を行います。
障害や疾患などで個別のケアが必要な子どもや、施設が足りない地域で保育を維持する場合など、保育者と子ども1対1が原則です。
定員 | 職員配置 | 職員資格 | 保育室等 |
---|---|---|---|
1人 | 0~2歳児 1:1 | 市区町村長が保育士等と同等の知識及び経験を有すると認める者 | 保護者の自宅 |
助成金の基準
認可保育所の設置基準をクリアできれば、自治体から補助金が交付されます。
補助金の対象は大まかに、認可保育所の工事にかかる「整備費」と、開業後の運営にかかる「運営費」の2つです。整備費補助金は、認可保育所を新たに建設、増設、改修した際に交付される補助金で、開業後1~2ヵ月後(例外あり)に受け取ることができます。
運営費補助金は運営費の補助金は、内閣府が毎年発表する「令和3年度公定価格単価表」に基づいて算出され、毎月必要書類を自治体に提出することで受け取ることができます。
認可保育所の補助金については、以下で詳しく紹介しています。
認可外保育所の設置基準
認可外保育所の設置基準は、認可保育所に比べると緩やかです。とはいえ、市区町村の認可は必要になるため、基準は遵守しなければなりません。
ここでは、「認可外保育施設に対する指導監査の実施について(旧:認可外保育施設指導監督基準)」と
「認可外保育施設の質の確保・向上について」を参考に、認可外保育施設の基準について解説します。
職員の配置基準と資格
1日に保育する乳幼児の数が6人以上、開所時間が11時間以内の場合は以下の通りです。ただし、11時間を超える場合は、保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上の配置が必要とされています。
保育士と子どもの割合 | 職員の資格 |
---|---|
|
保育に従事する3分の1以上が、保育士または看護師(助産師・保健師含む) |
保育時間
認可外保育所は運営の自由度が高く、認可保育所ではサポートできない夜間保育や宿泊、日曜祝日対応や24時間運営も可能です。
施設設備の基準
1日に保育する乳幼児が6人以上の場合は、子ども1人に対し1.65㎡の広さが必要です。5人以下の場合は、適切に保育を行える広さを確保します。
ただ、0歳児の保育スペースは、幼児(満1歳~就学前)とは別の部屋であることが望ましいとされています。
設置場所は認可保育所と同じく1階であることが望ましいとされていますが、防災上必要な措置を講じれば、2階以上にも設置できます。
助成金の基準
原則として、認可外保育所に国の補助金は交付されませんが、企業主導型保育事業のみ認可保育所並みの助成金を受け取ることができます。
企業主導型保育事業の助成金は以下の4つです。
- 運営費
- 整備費
- 施設利用給付費
- 利用者負担額減免臨時給付費
これらの助成金については、以下で解説しています。
まとめ
保育所の設置基準は、保育所の形態によって異なります。
保育事業への参入を検討しているなら、早い段階で設置基準についてリサーチしておきましょう。保育定員や良い物件を確保できても、自治体の設置基準を満たせなければ、審査を通過できないからです。
また、認可・認可外問わず、開業後も自治体の審査や立入調査は行われます。最新の設置基準を確認しながら、日々保育所を運営していくのは大変です。
スクルドアンドカンパニーは、40園の運営実績があります。事業者の方にベストな形態の保育所を提案することや、設置基準の確認、物件の確保、申請手続き、自治体対応などの開業サポートも可能です。お気軽にお問い合わせください。