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  • 2021.12.28
  • コラム

企業内保育所とは?導入のメリットや運営方法について解説

企業内保育所

企業が企業内保育所を設置することで、経営者と従業員に様々なメリットがあります。

自社に保育所があれば、出産や育児を理由とする従業員の離職を減らせますし、子どもの預け先がないから復職を諦める、といった事態を回避できます。

また、国は法整備や補助金などを通じて保育所の設置を後押しています。制度をうまく活用すれば、新規参入のハードルを下げられるかもしれません。

この記事では、こういった企業内保育所を導入するメリットと保育所の運営方法について解説します。

企業内保育所とは?

企業内保育所とは、企業が従業員の子どもを預かるために社内に設置する保育所のことです。

企業が設置する保育所には、認可外保育施設に分類される「企業内保育所」と、自治体の認可事業である「事業内保育事業」の2つがあります(平成28年度に内閣府が開始した企業向けの助成制度である「企業主導型保育事業」は、令和3年で申し込みを終了しているため、ここでは割愛します)。

形態 企業内保育所 事業所内保育事業
分類 認可外保育施設 地域型保育(市町村の認可事業)
認可 認可の必要はなし、ただし届出は必要 市区町村の認可が必要
設置基準 認可外保育施設指導監督基準 児童福祉施設の設置と運営に関する基準
対象年齢 定めなし 0~2歳
補助金 自治体によって独自の補助制度あり あり
運用費用 企業負担+利用従業員の保育料 公費+保護者の保育料+事業主負担

企業内保育所と事業所内保育事業の違い

企業内保育所と事業所内保育事業の大きな違いは、国の認可事業であるかないかです。

認可保育施設である事業所内保育事業は、設置場所や敷地面積、設備などの基準が細かく設定されている厚生労働省「児童福祉施設最低基準」をクリアしなければなりません。

企業内保育所は認可外保育事業であり、企業の勤務体制に合わせた開所日や保育時間を自由に設定できます。

企業内保育所の助成制度は自治体が独自に展開しています。

まずは企業内保育所を開設し、体制が整ってから事業所内保育事業に移行するケースも見られます。事業所内保育事業については、以下のページで詳しく紹介しています。

事業所内保育とは?事業所内に保育所を設置、運営するのに必要な知識まとめ

企業内保育所を導入するメリットとは?

従業員

企業内保育所を導入するメリットについて解説します。

人材の定着率アップ

企業に保育所があると人材の定着率がアップします。

待機児童問題や核家族化により、働きながら子どもを預けられない従業員は離職や長期休暇を選択するしかありません。しかし、企業内保育所があると従業員の保育所探しなどの負担を軽減し、出産・育児後の早期復帰や継続したキャリア形成を可能にします。

企業内保育所の設置により優秀な人材が定着すれば、人材育成のコスト削減も実現できます。

従業員満足度の向上

企業内に保育所があると、従業員の満足度が向上します。勤務地の近くに保育所があることで送迎の手間を省けますし、子どもの変調時にすぐ駆けつけることも可能です。

さらに、企業内保育所は、土日祝日、延長・夜間保育など、地域の保育所では対応できないニーズに応えられます。一般的な認可保育園は土日祝日は休みで、延長保育の時間も決まっているので、保育所に合わせて働き方を調整するしかなく従業員の負担は大きくなります。

企業内保育所は従業員の働き方に合わせて保育サービスを提供でき、時間的にも精神的にも余裕が生まれるため、職場全体のモチベーションも高まります。

企業価値・企業イメージの向上

企業内に保育所があると、企業価値や企業イメージが向上します。

地域の子どもを受け入れることで地域の子育て環境の改善できますし、女性や子どもに貢献している企業であるとアピールできます。企業へのイメーがよくなるでしょう。

さらに、こだわりのある園舎デザイン、手ぶら登園、外国人教諭による英語教育、モンテッソーリ教育など、システムや保育内容にもこだわることで、求職者やステークホルダーからの評価も高まるでしょう。

補助金を受けられる

企業内保育所は、補助金を受給できます。補助金には「施設整備費補助」と「運営費補助」の2つがあり、制度名や支援内容、取得の基準などは自治体によって異なります。

以下では埼玉県の事例を紹介します。

補助金制度名 補助対象経費(一部抜粋) 補助額
令和3年度企業内保育所設置等促進事業補助金 定員6名以上の新規施設整備に要する経費、または定員増に伴う拡充整備と備品購入に要する経費。 1か所あたり500万円以内
定員6名以上の共同利用型企業内保育所を新たに開設、または転換した場合の運営費。
  • 1年目300万円以内(月額 250,000円)
  • 2年目225万円以内(月額 187,500円)
  • 3年目150万円以内(月額 125,000円)

埼玉県のように認可外保育事業の狭義である企業内保育所を対象とした補助制度はまれですが、認可外保育事業向けの補助制度を展開している自治体は複数あります。

企業内保育所の補助金ついては、以下のページで詳しく紹介しているので参考にしてください。

企業内保育所の補助金とは?申請方法も事例でわかりやすく解説

企業内保育所を導入する流れ

保護者

企業が企業内保育所を開所するには10ヵ月~1年程度かかります。導入までの流れは以下の通りです。

開所日から逆算して、計画を進めていきます。

手順 概要 詳細
1 保育所の設置検討と社内のニーズの把握 従業員に対しアンケートやヒアリングを実施する。このタイミングで保育所設置のメリットも伝達する。
2 設置方法を検討 自社単独で設置するか、地域の企業と共同して設置するか決める。共同設置は運営のために別組織を立ち上げる場合もある。
3 運営方式を検討 自社で運営するか、委託会社に任せるか決める。保育業界に新規参入する場合は、委託方式を選んだほうがスムーズに進む。
4 設置基準を確認して設置場所を決める 従業員に関係する場所で開設する。事業所内の敷地、近接地、通勤経路、従業員の社宅付近など。
5 補助金申請 都道府県のHPや担当課に問い合わせ、事業計画書など必要書類を提出。自治体による現地確認を経て補助金交付申請を行う。
6 保育所の準備と利用者の募集 保育士の採用、設備や備品の準備を進める。賠償責任保険や傷害損害保険への加入手続きを済ませる。

上記はあくまで一例ですが、大まかな流れはこのようになります。ちなみに、企業内保育所を立ち上げるまでの流れについては、以下のページで詳しく紹介しています。

企業内保育所を立ち上げるには?開設までの流れと設置要件

企業内保育所の基準

企業内保育所を開設するには、厚生労働省「認可外保育施設指導監督基準」にある基準に適合させるとともに、建築基準法・消防法・食品衛生法・労働基準法等関係法令を遵守する必要があります。基準を満たさないと企業内保育所は運営できません。

ここでは、保育士と施設に関連する基準のみ抜粋して紹介します。

保育従事者の人数

在籍する園児の年齢と人数に応じて、保育従事者の人数が定められています。

  • 0歳児3人につき保育士1人以上
  • 1、2歳児6人につき保育士1人以上
  • 3歳児20人につき保育士1人以上
  • 4、5歳児30人につき保育士1人以上

保育している園児が1人である場合を除き、常時2人以上の配置が必要です。

保育従事者の資格

在籍園児数に必要な保育従事者数のうち、3分の1以上が保育士または看護師(准看護師を含む)の資格を有している必要があります。

単純に0歳児を多く預かるほど保育士の人数が必要になるため、従業員の大半が1年以上育児休暇を取得する企業では、あえて1歳児以上を対象としている場合もあります。

施設の広さ

企業内保育所で保育専用として使用する部屋(保育室)は、0~1歳児1人あたり1.65㎡以上、2歳児以上は1人当たり1.98 ㎡以上の広さが必要です。

保育室の有効面積に調理室、トイレ、浴室等は含まず、戸棚や備品等を除いたかたちで計測します。

面積に含めることができる物の例 面積に含めることができない物の例
  • 食事するときに使う机、椅子
  • 遊びの時間に使用する遊具
  • 吊戸棚等(保育士1人が行動できる空間が必要)
  • 常設しているロッカーや本棚
  • 可動式であっても常設しているピアノや棚

B

企業内保育所の主な収入と支出

企業内保育所の主な収支は以下の通りです。

収入 支出
  • 保育料(月額、延長料金、一時預かり、入園申し込み料等)
  • 補助金
  • 企業負担金
  • 人件費(保育従事者)
  • 賃貸料(土地賃借料、建物賃借料)
  • その他(食費、光熱水費、消耗品費等)

定員10名の収支例

設置費用 工事内容 4階建て事務所ビルの1階倉庫部分を改修
施設面積 85㎡
工事費 550万円
運営費用 保育従事者 4名(うち非常勤2名)
保育料 平均4万円/月
人件費 648万円/年
諸経費 130万円/年
運営費合計 778万円/年

出典:埼玉県「企業内保育所 共同利用マニュアル」

企業内保育所の運営方法

企業内保育所の運営方法について紹介します。

自社で運営する

企業内保育所を自社で運営する方法です。店舗ビジネスや保育事業関連の企業なら比較的スムーズに運営を開始できるでしょう。

ただ、運営上の避けられないトラブルや、保護者のクレームなど企業が直に対応しなければならないため、本業以外の負担は大きくなります。

将来的に保育所の複数展開や、保育事業に参入予定なら良い選択です。

他社と共同で運営する

複数の企業で共同して運営する方法です。

共同利用型企業内保育所とも呼ばれ、1社が設置した保育所を近隣企業やグループ企業と共同で利用する「代表企業型」と、複数の企業で経費を負担して保育所を設置・運営する「フラット型」の2パターンがあります。

経済的な負担の軽減や、利用者の安定的な確保などのメリットがある一方、定員オーバーした時の受け入れや、施設設備費の負担割合など調整が難しくなる課題があります。

運営会社に委託する

企業内保育所は、自主運営・共同利用型どちらも運営会社に業務を委託できます。

自主運営の保育所が経営難に陥る主な原因は、ノウハウや経験不足によるものです。万一事故が起きてしまえば、子どもの生命に対して危険が及んでしまいますし、企業への風評被害も起こりえます。

運営会社に委託することでこういったリスクを減らせますし、自主運営では難しい英会話やスポーツなどの教育カリキュラム、野外活動や病児・病後児保育などの幅広いサービスを提供できます。

また、保育士を自主雇用している運営業者を選べば、人件費を正確にコントロールできるようになります。運営委託費はかかっても、結果的にコスト削減につなげられます。

まとめ

企業内保育所を設置すれば、従業員は産休・育休からスムーズに復帰でき、企業は計画的な人員配置や優秀な人材の確保を実現できる可能性があります。

ただ、企業内保育所を作ろうと思っても、自社にノウハウがないと開設、運営するのは大変です。

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