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  • 2022.01.27
  • コラム

起業して保育園経営者になるにはどうしたらいい?必要な条件と運営の知識を紹介

保育園の起業

保育園の経営者になるべく、起業を検討している方は多いと思います。2000年以前、保育園の経営は社会福祉法人に限定されていました。今は規制が緩和され、株式会社やNPO法人も保育園を経営できます。

保育園の種類や形態を選ばなければ、まったくの未経験者でも起業できますし、実際に保育系の資格を持っていなくても経営に成功している人もいます。

この記事では、保育園の経営者として起業したいと考える方に向けて、保育園を設立・運営していくのに必要な知識を紹介します。

保育園での起業に必要な条件とは?

保育ビジネスで起業するために、経営者はどのような条件を満たせばよいのでしょうか。ここでは、起業に必要となる条件について解説します。

経営者に資格は必要ない

起業して保育園を経営するのに、保育士資格や保育士としての実務経験は問われません。

ただ、現場で働く従業員には保育士資格が必要です。経営者自身に保育業界での実績や実務経験があれば、自身の保育観を理念に掲げることができますし、プレイングマネージャーとして即戦力になることができます。

事業者の基準を満たす

起業して保育園を運営するには、事業者としての基準を満たさなければなりません。

例えば、認可保育園を経営するには「社会的信望を有すること」が必要であり、これには以下のような要件が含まれています。

  • 反社会的な組織等と関係がない。
  • 税金を滞納していない。
  • 保育事業において、過去に児童の死亡事故またはそれに準ずる重大な事故を起こしていない。
  • 社会福祉事業に関する知識または経験がある。

参考URL:厚生労働省「保育所の設置認可等について」

保育園を設置する自治体によって内容は異なり、定められている基準を満たさないと起業はできません。

保育園の設置基準を満たす

保育園には自治体の認可基準を満たしている「認可保育園」と、認可保育園以外に分類される「認可外保育園」があり、それぞれに設置基準が定められています。

設置基準の違いは以下の通りです。

形態 認可保育園 認可外保育園
満たすべき要件 「保育所の設置認可等について」「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」等に定められている。 「児童福祉施設最低基準」「認可外保育施設指導監督基準」等に定められている。
自治体の審査 あり なし ※開業後に届出は必要
保育士の人数
  • 0歳:子ども3人に保育士1人
  • 1~2歳:子ども6人に保育士1人
  • 3歳:子ども20人に保育士1人
  • 4歳以上:子ども30人に保育士1人

※原則として常時2人以上

  • 0歳:子ども3人に保育士1人
  • 1~2歳:子ども6人に保育士1人
  • 3歳:子ども20人に保育士1人
  • 4歳以上:子ども30人に保育士1人

※原則として常時2人以上

保育室等の面積 0歳、1歳児

  • 乳児室:1.65㎡/人
  • ほふく室:3.3㎡/人

2歳児以上

  • 保育室:1.98㎡/人
  • 園庭:3.3㎡/人
乳幼児1人あたり1.65㎡以上
開所時間 原則11時間 無制限

認可保育園は児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けている保育施設です。職員資格や保育室等の面積等に厳しい基準が設けられており、自治体の審査を通過すれば補助金が交付され、補助金によって運営費を賄うことができます。

認可外保育園は、認可保育園以外の保育施設です。満たすべき基準は存在しますが、認可保育園ほど厳しくはありません。そのため、まずは認可外保育園で起業して、実績を積んでから認可保育園に移行する経営者の方もいます。

ただ、保育料やサービス内容を自由に設定できるため、認可基準を満たしていても、あえて認可外として運営している保育園も存在します。

認可、認可外それぞれの基準については、以下のページで詳しく解説しています。

保育園の認可に必要な条件とは?認可と認可外のそれぞれの基準を説明

保育園を起業するメリット

保育園

保育園の経営者として、保育ビジネスで起業するメリットについて解説します。

社会貢献ができる

これから起業を考えている方の中には、「自分の力を社会に役立てたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。

保育園経営は、未来を担う子どもたちとその家族を支え、幼児期の社会性や生活習慣を育む社会貢献度の高い事業です。

子どもの笑顔や成長、地域からの感謝など、人のために役に立っていることを日々実感できるため、経営者として充実した日々を過ごせるはずです。

少ない初期投資で始められる

保育園の経営は、少ない初期投資で始められます。

以下の表は、内閣府「企業主導型保育事業立ち上げ事例のご紹介」より、テナントを改修して保育園を設置した場合の設立費用です。

エリア 開業場所 園児定員数 設立費用 費用補足
東京都杉並区 本社建物内(2階) 10人 2,600万円 開園準備費、外階段整備費を含む
東京都武蔵野市 学校敷地内、合宿所改修 8人 約4,775万円 建物支出、製氷機や食洗機などの備品支出、人件費等を含む
東京都国分寺市 事業所内設置(1階) 12人 約4,500万円
大阪府八尾市 近隣ビル(1階) 50人 約5,886万円
和歌山県和歌山市 近隣ビル(2階) 18人 約2,800万円
福岡県福津市 事業所内設置(元事務室) 50人 約1,450万円 改装費、追加工事代金、備品購入費用、その他を含む

開業エリアにもよりますが、設立費用は2,600~6,000万円弱となっています。さらに、補助金などを受けることができるので、こういった費用の一部を賄えます。

初期投資の資金調達は、融資も検討すると良いでしょう。例えば、自治体の認可事業である小規模保育園なら、事業者に対して通常融資率80%のところ、90%まで引き上げて貸付を実施しています。

また、賃貸での開業には無担保貸付制度を用意しており、設置・整備資金の無担保貸付限度額を通常300万円から3,000万円に引き上げる優遇融資も実施しています。

参考URL:独立行政法人福祉医療機構「福祉貸付事業 融資のご案内」

利益率が高い

保育園は、子どもが一度入園してしまえば、余程の理由がない限り卒園まで在籍します。定員さえ確保してしまえば、安定した収益を見込めるのです。

以下の表は、小規模保育園(A型・B型・C型)の収支状況です。

ちなみに、A型とB型の違いは職員資格の比率です。A型は原則として職員全員に保育士資格が必要であり、B型は全体の2分の1以上に保育士資格があれば配置基準を満たしていることになります。

科目 小規模保育園A型(定員6~19人)
339事業所
小規模保育園B型(定員6~19人・職員の1/2以上が有資格者)
185事業所
小規模保育園C型(定員1~5人)
30事業所
金額(千円) 構成比率 金額(千円) 構成比率 金額(千円) 構成比率
収益 保育事業収益 45,696 37,710 27,140
児童福祉事業収益 49 11 421
その他収益 441 175 51
借入金利息補助金収入 1 0 4
受取利息配当金収入 0 15 0
特別増減による収益 1,075 629 966
費用 人件費 29,626 64.8% 24,359 64.6% 17,233 62.5%
事業費 3,562 7.8% 3,552 9.4% 2,117 7.7%
事務費 6,279 13.7% 4,859 12.9% 2,930 10.6%
その他の費用 791 1.7% 609 1.6% 251 0.9%
支払利息 51 0.1% 23 0.1% 13 0.0%
法人本部帰属経費 722 1.6% 662 1.8% 0 0.0%
収益計 45,746 100.0% 37,736 100.0% 27,565 100.0%
費用計 41,031 89.7% 34,064 90.3% 22,545 81.8%
収支差 4,716 10.3% 3,672 9.7% 5,021 18.2%

令和元年の小規模保育園の収支差率はA型10.3%、B型9.7%、C型18.2%でした。介護事業の収支差率は2.4%(令和2年)であることから、採算性が高い事業であることがわかります。

参考URL:厚生労働省「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】」介護給付費分科会「令和2年度介護事業経営実態調査結果の概要(案)」

小規模なら短期間で開業できる

一般的な認可保育園は開業までに2~3年を要しますが、定員6~19名の小規模保育園なら10~11ヵ月程度で開業できます。

以下は小規模保育園を起業するスケジュールの一例です。開業後に届出を提出する認可外保育園なら、さらに開業準備期間を短縮できます。

時期 自治体との協議 ハード面の準備
5月~6月末日 協議申込書受付期間
  • 保育所の場所を確保する
  • 施設長を手配する
7~8月 協議対象施設の選定・審査
  • 施設プランニング
  • 工事着工
  • 教育カリキュラム、マニュアル、オペレーションなどの作成
  • 工事竣工(内装)
10月 一次利用調整(選考)申込み開始
1月 認可・確認申請書提出
2月 一次利用調整(選考)結果通知
  • 保育士を募集・採用
  • 開園準備(設備や備品搬入)
  • 入園説明会
  • 入園式
3月 事業認可・確認
4月 事業開始

小規模保育園に関しては以下で詳しく解説しています。

小規模保育園の開業に必要なこととは?流れや設置要件や収支例などを解説

保育園の起業に必要な知識とは?

学び

保育園で起業し、経営を続けていくには幅広い知識が必要です。ここでは、運営を続けていくために必要な知識を紹介します。

保育関連の法律

保育園経営で起業するには、児童福祉法や建築基準法、消防法などの法律を周知しておかなければなりません。

万一法律に違反した場合知らなかったでは済まされず、法的措置を取られてしまう可能性があるからです。

ただ、複数の法律が関わってくるため、起業の準備と同時進行で対処していくのは難しいです。

保育園に関連する法律については、以下のページで詳しく説明しています。
「保育園の運営のために知っておくべき法律とは?」

スクルドアンドカンパニーは、保育事業専門の弁護士や社会保険労務士、会計士・税理士、建築設計事務所と密接な連携を図っているため、保育園のあらゆる問題を解決できます。

開業から運営委託までフルサポート可能です。基準に則った開業サポートや運営カリキュラムをご提案しますので、お気軽にご相談ください。

スクルドアンドカンパニーの問い合わせ先
電話番号:03-6273-2760
メールフォームはこちら

集客

認可保育園の園児募集は自治体が行いますが、認可外保育園は保護者と事業主の間に直接契約が発生するため、事業主自ら園児を集客しなければなりません。

集客に失敗すると定員を満たすことができず、運営が立ち行かなくなる可能性もあります。このようなリスクを回避するため、計画を立てて集客のために予算を投下する必要があります。だからこそ、マーケティングや集客の知識を学んでおくのがよいでしょう。

集客戦略は地域の特性を考慮して実施します。紙媒体でけでなくWeb媒体もうまく利用しましょう。

開業後は一時保育サービスや入会金ゼロキャンペーン、1時間無料チケットなどで新規顧客を呼び込むのもよいですし、親子英会話やリトミックなど他園にはない教育サービスでと差別化するのも有効です。

保育園のホームページの立ち上げ方については、以下のページで詳しく紹介しています。

保育園のホームページを作るときの流れは?制作会社の選び方も紹介!

保育士の採用

保育士がいなくては保育園の運営は難しいですが、保育士の採用に苦戦している保育園は少なくありません。

厚生労働省「保育士の現状と主な取組」によると、平成30年時点で保育従事者として勤務している人は約59万人、保育士資格を持っているものの従事していない潜在保育士は約95万人と従事者の1.6倍となっています。

潜在保育士の掘り起こしの掘り起こしも視野に入れ、採用サイトや人材紹介、自園のホームページで採用を強化しましょう。

ただ、「マイナビ中途採⽤状況調査2020年版」によると、保育業界分野の1人当たりの求人広告費は83.9万円となっています。求人の予算を用意して採用も充実させる必要があります。

費用

保育園の開設と運営にかかわる費用の目安を事前に抑えておきましょう。以下は費用の一例です。

項目 詳細 売上に対する比率
人件費 保育士などの給与、福利厚生費 60~70%
広告宣伝費 園児募集や、保育士募集などにかける費用。HP運用、チラシ印刷代や求人広告掲載費など。 1~3%
賃借料 園舎と土地を借りている場合 5~15%
消耗品費 おもちゃや工作の材料、医薬品、保育業務支援システムなど。 1~3%
水道光熱費 水道代やガス代、電気代や熱供給など。 2%
委託運営費 業務の一部を、他の会社へ依頼した場合。 2~3%
傷害保険、賠償保険料 保育所、保育士等に法律上の損害賠償責任が発生した場合の備え。 2~3%

運営費の7~8割は人件費であり、テナントを借りて開業する場合は、賃借料が5~15%を占めます。例えば、定員10名、保育士3~4名を配置する小規模保育園の場合、年間の人件費は約600~700万円、諸経費は約130~150万円、水道光熱費を含めると費用の概算は800万円前後になります。

補助金・助成金

自治体によって補助金・助成金の制度は異なります。以下は小規模保育事業における補助金一覧です。

補助制度 概要 金額参考(一部抜粋)
保育所等整備交付金 保育園の新設・修理・改造・整備にかかる経費や防音壁の整備、防犯対策の強化にかかる費用の一部を補助するもの。
  • 本体工事費:54,400~105,700千円/1施設
  • 特殊附帯工事:8,190~14,450千円/1施設
  • 設計料加算:本体工事費に係る交付基準額の5%
  • 開設準備費加算:28~42千円/子ども1人あたり
  • 土地借料加算:12,000~41,900千円/1施設
  • 地域の余裕スペース活用促進加算:1,750~12,760千円
保育所等改修費等支援事業 賃貸物件を活用して保育所等を開業する際など、設備運営基準を満たすために必要な改修費等の一部を補助する。 1施設あたり:15,000千円
(緊急対策参加自治体は20,000千円、待機児童対策協議会に参加する等一定の要件を満たす自治体は23,000千円)
保育所等におけるICT化推進等事業 保育の周辺業務や補助業務に係るICT等を活用した業務システムの導入を支援するもの。 1施設当たり:1,000千円
地域型保育給付(運営費等補助金) 保育所の定員規模や入所児童の年齢区分等によって運営費を補助するもの。 子ども1人あたり:150〜300千円/月が目安(公定価格+加算分) ※開業場所、子どもの人数、職員数などにより上下するため、おおよその数値です。
保育所等におけるマスク購入等の感染拡大防止対策に係る支援 新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、保育所等の消毒に必要となる経費を補助するもの。 1施設当たり:500千円以内

参考URL:厚生労働省「令和4年度 保育関係予算概算要求の概要」

国や自治体は、地域の保育ニーズを満たすため、あらゆる策を講じています。ただ、制度は流動的であり、補助金の条件や申請方法などは毎年変わります。これらの最新情報を押さえて起業の準備を行わないと、損をしてしまうかもしれません。

補助金については、以下のページで詳しく紹介しています。

保育所の補助金は?開設や運営の補助金について解説

まとめ

保育園経営は初期投資が比較的少なく採算性も高いため、起業しやすい事業といえるかもしれません。

ただ、保育士採用や人件費のコントロールなどに苦戦している経営者が多いのも事実です。そのようなリスクを避けるためにも、委託運営も考慮に入れるのがよいでしょう。専門の会社に委託することで、幅広いサポートを受けることができます。

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